IoTおよびIIoT電源の選択と使用に関するガイド
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2019-12-17
モノのインターネット(IoT)および産業向けのモノのインターネット(IIoT)用にさまざまなデバイスが設計されていますが、どのデバイスにも、データ入力、処理、および通信用の主電源が必要です。しかし、IoTデバイスの機能と環境が多様になった結果、パワーラインからバッテリ、太陽電池まで多岐にわたる主電源が使用されるようになりました。
また、幅広い機能と動作モード(リッスン用の「常時オン」や入力刺激に対する高速応答用の「スタンバイ」など)に合わせて、内部電源を慎重に選択する必要があります。目標は、パフォーマンスを損なったり、サイズ、重量、コストが増える可能性のある広範囲な熱管理を必要とせずに、効率を最大化し、物理サイズを小型に維持し、アプリケーションの電力密度を最大化することです。もう1つの考慮事項はユーザーの安全性です。この点は犠牲することはできません。
この記事では、IoTデバイスで使用されるさまざまな種類の電源について説明し、これらの要件に合わせて設計されているRECOM Powerの製品の例をいくつか紹介します。
ラインベースの電源
ラインパワーを使用するIoTまたはIIoTデバイスは、ポータブルデバイスに比べ、電源に関する制限が少ないのが特徴です。一般的に、ラインパワーは適切な電流レベルの固定入力電圧を提供します。太陽電池などの他の電源は、照光や組み込まれている電圧レギュレーションの程度に応じて電圧および電流のレベルが大きく異なります。IoTまたはIIoTデバイスには、多様な入力電力に対応できる柔軟な入力電力要件が必要です。
電源メーカーであるRECOM Powerは、IoTまたはIIoTアプリケーションの入力電圧の柔軟性ニーズを満たすために、超小型の完全にカプセル封止された5W電源ファミリであるRAC05-Kシリーズ AC/DCモジュールを設計しました。
これらの電源モジュールは、85~264V AC(47~63Hz)または120~370V DCで機能します。この極めて一般的なライン入力電圧範囲に対応するこれらのモジュールは、世界中の家庭または産業環境で使用することができます。さらにこの点は、これらの電源の動作温度範囲でも証明されます。RAC05-Kシリーズは、-25°C~+50°Cの温度でフルパワーを生み出す定格を備え、出力電力は+50°C~+70°Cでディレーティングされます。
このシリーズの個々のモデルの固定出力電圧は、3.3V、5V、12V、15V、または24Vのいずれかです。5VのRAC05-05SKのプリント基板上のフットプリントは1 x 1インチ(25.4 x 25.4mm)で、高さが0.65インチ(16.5mm)です。出力定格5Wであるこの電源モジュールの電力密度は、立法インチあたり7.7Wと優れています(図1)。
図1:RECOM RAC05-05SK電源モジュールは5Wを1 x 1 x 0.65インチのパッケージに収め、立法インチあたり7.7Wの体積電力密度を実現しています。(画像提供:RECOM Power)
これらの電源の効率は80%を超え、無負荷消費電力はわずか75mWです。この組み合わせにより、この電源は、高効率および内部エネルギー低損失によってデバイスの冷却を維持できる「常時オン」のIoT/IIoTデバイスに適したものになっています。
安全性において、RAC05-Kシリーズには、統合型のヒューズ、過電圧、および短絡保護が備わっています。このシリーズは、IEC60950-1およびUL62368-1安全性規格に準拠し、外部コンポーネントなしでEN55032 Class B EMC制限も満たします。
幅広い入力電圧範囲、小型サイズ、安全面への配慮、および幅広い動作温度範囲を兼ね備えたこれらの電源は、多くのIoTまたはIIoTラインパワーアプリケーションに適しています。
産業用強度の電源
産業環境では、これらのデバイスの動作する環境条件により、特殊な電源が必要になることがあります。これに適した電源製品ラインの1つがRECOMのR1SXシリーズ DC/DCコンバータで、その動作温度範囲は-40°C~+100°C(ディレーティングなし)です。この温度範囲は、ほとんどの産業条件に安全に対処できます。このシリーズのデバイス例としてR1SX-3.305-Rがあります。このデバイスは1Wの昇圧DC/DCコンバータで、3.3Vの入力に対応し、最大5V出力まで上昇します。
また、これらのコンバータは、1kV/1秒(オプションでは3kV/1秒まで対応可能)まで絶縁されるDCです。接地ループおよび電気ノイズが極めて一般的な産業環境において絶縁は重要です。入出力を絶縁することで、これらの接地ループを分割し、ノイズの伝搬を最小限に抑えることができます。 R1SX-3.3-5 DC/DCコンバータは、レベルシフティングでの絶縁型データインターフェースをサポートするために採用できます。
図2:データインターフェースで絶縁を維持するためには、デジタルアイソレータだけでなく、絶縁型電源も必要です。この回路ではアイソレータの一次側に3.3V、二次側に5Vを使用して、ガルバニック絶縁を維持しながら論理レベルシフトを実現します。(画像提供:RECOM Power)
ポータブルデバイス用のDC/DC電源
バッテリ駆動型ポータブルIoTまたはIIoTデバイスには、小型サイズと低電力損失が必要です。目標は、バッテリ寿命をできる限り延ばし、予期しないダウンタイムを削減し、多数のデバイスのバッテリ交換に必要な労力を削減することです。このような設計の主な特徴として、電源を必要に応じて静止またはスタンバイ状態にする機能、高効率、および寿命に近づいたときのバッテリ電圧の低下を考慮した幅広い入力電圧範囲があります。
ポータブルIoT要件に対応する仕様のDC/DCコンバータの例として、RECOMのR-78Sシリーズがあります。このシリーズのデバイスの1つであるR-78S3.3-0.1は、1.5V AAバッテリから3.3Vを出力する設計になっています。このシリーズには、出力電圧レベルが1.8、3.3、および3.6Vの、シングルセルバッテリから幅広いマイクロプロセッサとコントローラに電力を供給するデバイスもあります。これらすべてのデバイスは入力電圧範囲3.15V~0.65Vで動作し、バッテリの最後の電力まで使い切ることができます。このパワーコンバータは標準効率が93%と高く、電力損失を最小限に抑えます。このコンバータは、消費電力がわずか7µAのスタンバイ状態にすることができます。高効率、スタンバイモード、および幅広い入力電圧範囲が結合されたこのパワーコンバータは、ポータブルワイヤレスIoTデバイスに最適です(図3)。
図3:ワイヤレスアプリケーションでバッテリ寿命を延ばすためにシャットダウンモードを使用している例。2100mAhのAAセル1つで7µAを数十年供給できます。(画像提供:RECOM Power、Art Piniにより変更)
R-78Sシリーズは、-40°C~+100°Cの幅広い動作温度も特徴とし、厳しい気象条件で車両に残される可能性のあるポータブルデバイスで有用です。
図3の例は、スタンバイ(スリープ)モードの使用を示しています。これらのモードの間、システムの消費電力はわずか20µWです。このモードの場合、コンデンサ電圧は、青いトレースで示しているように、完全に充電された3.3Vの値から、抵抗器R1およびR2で設定された閾値に到達するまで時間の経過とともに低下していきます。コンバータがアクティブモードで動作しているときのシステムの消費電力はわずか200µAです。アクティブモードでは、コンデンサが次のサイクルに向けて再充電されます。消費電力は、アクティブ/スリープモードのデューティサイクルに比例します。
RECOM R-78Sコンバータの低入力電圧機能は、IoTまたはIIoT環境発電アプリケーションにとって非常に優れた機能です。たとえば、これらのコンバータを使用して、3.3Vの充電式電池を充電するために太陽電池や熱電発電装置(TEG)などの低電圧源の出力を昇圧させることができます(図4)。
図4:この図では、R-78S3.6-0.1をブーストコンバータとして使用して、太陽電池またはTEGから低電圧入力を取得してその電圧を3.6Vに上げ、ダイオード経由で3.3V充電式電池を充電しています。充電は入力電圧が0.65Vに低下すると始まります。(画像提供:RECOM Power)
ダイオード経由で電池を充電するためには、高い出力電圧(3.3Vよりも3.6V)が必要です。ダイオードは、完全に充電されたバッテリがコンバータの出力を駆動するのを防ぎます。また、これらのコンバータは、安定して動作し続けるために短絡と過温度から保護されます。
R-78S3.3-0.1を使用したリファレンス設計回路および評価ボード
リファレンス設計は、コンポーネントが設計ニーズを満たしているかどうか判断するのに役に立ちます。R-78SシリーズのDC/DCコンバータの場合は、デバイスを評価するための実践ツールが備わっています(図5)。
図5:RECOM R-78Sシリーズ DC/DCコンバータのリファレンス設計には、標準のAAセルバッテリに比べて小型のデバイスが示されています。このリファレンス設計のプリント基板はプロトタイプに組み込むことができます。(画像提供:RECOM Power、Art Piniにより変更)
RECOM R-REF02-78Sのリファレンス設計は、評価用プロトタイプに簡単に組み込むためのシンプルな0.100インチヘッダと取り付け穴を備えた実装済みプリント基板として提供されています。コンバータのスリープモードの評価用にコンバータのイネーブルピンがヘッダに取り付けられています。
より厳格なデバイステスト向けに、RECOMは評価ボードR-78S3.3-0.1-EVM-1も提供しています。この評価ボードにはリファレンス設計よりも多くのテストノードがヘッダに取り付けられています。
図6:RECOM R-78SS.3-0.1-EVM-1評価ボードの回路図には、より完璧な選択可能テストポイントと、必要に応じてデバイスと通信するためのUSBポートが示されています。(画像提供:RECOM Power)
この評価ボードにはリファレンス設計のすべての要素が含まれていますが、コンバータの入力および出力接続へのアクセスが増えています。追加のジャンパとヘッダは、さまざまな評価を実施したり、デバイスパラメータを決定するために使用されます。USBポートは、オフボードのデモンストレーション回路に電力を供給するために含まれています。
まとめ
IoTおよびIIoTアプリケーションには、ラインパワー、バッテリ、環境発電などさまざまな方法で電力を供給できます。アプリケーションによって、ある程度の電源要件が決まります。設計が幅広い運用シナリオに対応できるように、設計者には多様な電源デバイスが必要です。ここで説明した、幅広い入力範囲、高効率、小型サイズ、および静止スタンバイモードを備えるRECOMパワー変換デバイスは、IoTおよびIIoT製品のエネルギー源の第一候補です。
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